据え置き型DAC内蔵ヘッドフォンアンプとしてのKORG DS-DAC-10

DigiFi No.10のヘッドフォンアンプを聴いてから1週間くらいしか経ってないですが、まあ、買いました。
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EDIROLUA-4FXというUSBオーディオインタフェースを長らくヘッドフォンアンプ代わりに使ってきたんですが、最近はさすがに不満を持っていて、ここ数年買い替えたいと思い続けていました。まあ、DigiFiのOlasonicヘッドフォンアンプは買い替えのきっかけとしては非常に大きいのですが。

買い替えたいと思ってはいたものの、あまりチェックしていたなかったので秋葉原のeイヤホンに聴きに行きました。eイヤホンの奥の方にあるヘッドフォンアンプ視聴スペースはざっくりと、3万円以下、5万円クラス、10万円以上という感じに比較できるようになっているのですが、その中で3万円以下(Fostex HP-A3)は物足りない、5万円は確実にグレードアップが感じられそう、10万円以上は予算的にあり得ない(でもすごい)、ということで5万円コースにしました。機種もたまたま繋いであったKORG DS-DAC-10が気に入ったので、他の機種を余り視聴することなく機種決定となりました。

元々が1000台限定、という触れ込みで販売開始になったためか、箱は値段を感じさせない簡素なもの。箱にはシリアルナンバーが書いてあり、既に5000台を超えているようです。
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USB-DACなので、背面に同軸デジタルとアナログRCAの出力とUSB入力、前面には標準プラグのヘッドフォン端子とボリュームがあるのみ。設定変更は全てPC側から行います。
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ケースは売価5万円としては素っ気ない感じがしますが、底面には美しい銅板が使われています。見えないところですが、ニヤリとするこだわりです。
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DS-DAC-10のウリは、5万円でSACDでも使われるDSD形式のファイルのネイティブ再生が出来ること、にあるのですが、PCからDSD形式でDS-DAC-10に音楽データを出力したい場合には、iTunesWindows Media Playerなどの一般的なプレーヤーは使えず、AudioGateという専用ソフトが必要です(PCM出力なら普通のサウンドデバイスとして使えます。ただ、一度OSのサウンドに出力された生のPCMデータを一度DSDに変換して出力するドライバとかあってもいいと思うのだけど。)。

既存のMP3ファイルなども一度DSDに変換し、DS-DAC-10側でDSDからDA変換をかけて再生することが出来るのですが、その効果は微妙な印象。それよりも、フォルダをファイルダイアログで開いて再生するファイルを決定する、という、WinAMPやSCMPXなど初期のMP3プレーヤーを思い出させる前時代的な使い勝手へのストレスの方が大きい。あー、iTunesって革新的だったんだなぁ。

使っていく中で印象は変わっていくかもしれませんが、DSDに変換して再生するよりも、PCMのまま176.4/192KHzなどにオーバーサンプリングして再生する方が音場的な広がりがあって個人的には好みかもしれません。DSDの音はよく「アナログ的」と言われるので、僕はPCM的な音の変化の方に慣れている、のかもしれません。PCMのままならなんでも再生できるから使い勝手も良いし。

専用ドライバをインストールして使う形なのですが、使っているRetina MacBook Pro 15"との相性が結構厳しくて、USBハブを介するとノイズが載って使い物にならず、本体のUSB端子に直結して使っています。さらに、雑誌付録の20cm高級USBケーブルを使っているので、かなり設置場所の制限を受けます。USB 3.0との相性は割と微妙なようなので、USB 3.0端子しか本体に付いていない現行のMacBookシリーズで使う場合は本体に直接繋ぐ使い方が基本になりそう。

DSD再生ができるUSBオーディオバイスって、全体的に動作が安定していない感じですよね。USBオーディオのアシンクロナス転送の独自ドライバの関係なのかもしれませんが、他社の機種では、抜くと普通にブルースクリーンになります、みたいな状態だったりすることもあるみたいで。とりあえず、今のところ自分のMacが刺さったことはないのですが、本体のUSB直結でも不可がかかるとたまーに音飛びしちゃうことはあります。この辺りは今後のファームウェアやドライバのバージョンアップで改善が進むことを期待したい。

(ヘッドフォンアンプとしての)音質については、視聴したときの印象のまま、素晴らしいクオリティ。UA-4FX比はもちろん、DigiFi No.10付録Olasonicヘッドフォンアンプ比でも格の違いを実感できます。UA-4FXと比較すると、高音はよりクリアに、低音はこれまで埋もれて聞こえなかった低域が聴き取れるように、音もちょっとだけ遠くから(広い空間で)鳴っているように感じる。

当然、イヤホンはいつものER-4Sのままで、です。

これまで、色々な機器のヘッドフォン出力で音楽を聴いてきましたが、ここまで明確に「音が変わった」と思ったのははじめてです。もう、iTunesの再生からネットラジオから、AD変換してパススルーしたTVの音から、何でもクリアに再生されて非常に素晴らしい。DS-DAC-10は本来、コストパフォーマンスの良いDSD対応DAC、なのですが、PCM再生のヘッドフォンアンプとしての使い方でも充分満足できそう。

ここまで変化のあるものなら、最近のヘッドフォンアンプ市場の盛り上がりもわからなくもありません。しかし、一般人の感覚的にはあり得ない「5万円のヘッドフォンアンプ」ですけど、ハイエンドはこの数倍の値段がするわけですから、オーディオ趣味は恐ろしい。この上のクラスになると、音もそうですが、筐体の仕上げの質が変わるんですよねぇ。

DS-DAC-10には満足しているし、家族を持つ普通のサラリーマン的にはこれくらいが限界なので、これ以上ステップアップするつもりはありませんけど、良いイヤホン・ヘッドフォンを持っているなら、DACやヘッドフォンアンプにもある程度こだわりを持った方がいい、のは間違いありません。