Drop + Etymotic ERX In-Ear Monitors〜その2 音質編〜

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下記の続き。音質編。今回、ER4SRとER-4Sの写真はイヤーピースを外した状態になっているが、使用中のため、イヤーピースがあまり綺麗な状態ではないので勘弁ください。

のっけから言い訳から始まるのだが、イヤホンの音質評価というのは難しい。

プロの評論家やSNS上の知り合いなど、オーディオ好きな人はいるが、その中には「この人が良いと思った製品は好きになれない」という人はいる。で、そういう人が権威あるオーディオ評論家だったりすると、「自分の感覚は間違っているのか?」という気分になる。

だが、趣味なのだから他人の評価など知ったことではない。

というわけで、普段Etymotic Research ER4SR/ER-4SというシングルBAばかり聴いている人間が同じメーカーの新作シングルBA機のERXをどう聴いたか、という観点で書いていくことにする。

ER4SRおよびER-4Sは「原音に忠実なフラットなイヤホン」と称される。一方で、現代の音楽とそれに合わせて作られた昨今の高級イヤホンと比較すると「低音の量感が足りない」という評価を受けることが多い。そして、再生周波数帯域は高域が16KHzまでで「ハイレゾにも非対応」である。

ただ、低音は強調されていないだけで、ER4SRとER-4Sはある程度パワーのあるヘッドホンアンプに接続すると低音は結構下の方まで鳴っている。そして、低音はとてもソリッドで鋭く、独特の気持ちよさがある。

高域は人間の耳が聴こえるのは理論上20KHzまでで、自分はそろそろ16-17KHzくらいまで聴こえれば良いような年齢である。20KHzを超えた音域の「ハイパーソニック・エフェクト」については「信じるか信じないかあなた次第」という話であろう。

これら低音と高音の特性はシングルBA、つまりドライバーが1個しか搭載されておらず、上下の帯域をカバーしきれないことが原因の1つでもあるが、鳴っている音は音は上から下まで非常にクリアであり、この気持ちよさは複数のドライバーが搭載された機種では味わえないと思っている。

これがER4SR/ER-4Sを愛用してきた大きな理由であり、ERXもその基本的な特性は変わらない。

ただ、ER-4S、ER4SR、ERXはそれぞれ個性が異なる。

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まず、ER-4Sの特徴は綺羅びやかな高音が一番の特徴で、ストリングスの響きや揺らめき、ギターのリフ、刺激的な電子音には麻薬的な魅力がある。既にディスコンになっていて入手は簡単ではないが、販売が開始されてから30年、未だに多くのファンを持つだけのことはある。

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ER4SRは長年販売されてきたER-4Sの後継機種にあたる現行機種。ER-4Sの特徴的な高音がやや抑えられたこともあり、日本ではそれほど人気が高いわけではないが、強調された音域がないため変な主張もなく、どこまでもフラットである。高音はER-4Sに比べれば大人しいが魅力的で、低音も量はないがしっかり出る。リファレンスたるバランス感を持っているモデルである。

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これらに対してERXは少しヴォーカルが前に出てくるような印象がある。ER4SR/ER-4Sは音源によっては歌よりストリングスやギターが気になってしまうことがあるが、ERXは歌ものはちゃんと歌が主張してくる。低音も多少主張するが、シングルBAなのでうるさく感じることはない。モニター寄りのER4SR/ER-4Sと比較するとリスニング用として聴いていて気持ち良いイヤホンだと言える。

空間表現については、ER4SR/ER-4Sと比べるとERXは広い空間で鳴っている印象で、イヤホンの範疇であるが、楽器ごとの位置関係も見えて聴きやすい。

使い始めて1ヶ月程度の感想だが、リスニング用として使いやすいERXをしばらくは家の中でのメインとして使っていくつもりだ。ER4SRは職場用、ER-4Sは刺激的な音が聴きたくなったときに使うことにする。

ER-4SもER4SRもERXも、個性の差はあれど音は全部好みなので、気が変わったら入れ替えれば良い、それだけのこと。ERXはEtymotic Researchの良さが分かる人に、是非とも揃えていただきたいモデルである。